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Structural investigation of human U6 snRNA recognition by spliceosomal recycling factor SART3 RNA recognition motifs (FEBS J., 2025) (担当:小野寺)
Structural investigation of human U6 snRNA recognition by spliceosomal recycling factor SART3 RNA recognition motifs
Iktae Kim , Kyeong-Mi Bang , So Young An , Changkon Park , Ji-Yeon Shin , Youngim Kim , Hyun Kyu Song , Jeong-Yong Suh , Nak-Kyoon Kim
FEBS J. 2025. Online ahead of print. DOI: 10.1111/febs.70275
RNAスプライシングは、複数のU snRNAとタンパク質から構成されるスプライソームによって進行する。U6 snRNAはスプライソームの触媒中心を担う重要なRNAであり、スプライシングサイクルの過程でU4 snRNAとの会合および解離を繰り返す。そのため、U6 snRNAは一度使用された後も適切に回収・再利用される必要があり、この過程を担う因子としてSART3(酵母Prp24のヒトホモログ)が知られている。
酵母Prp24は4つのRNA recognition motif(RRM)を有し、U6 snRNAの非対称バルジ領域を認識することが構造学的に明らかにされている。一方、ヒトSART3は2つのRRMしか持たないにもかかわらず、U6 snRNAと結合しスプライソーム再構築を促進するが、その分子機構は十分に解明されていなかった。
本論文では、ヒトSART3によるU6 snRNA認識機構を明らかにするため、蛍光偏光アッセイ、電気泳動シフトアッセイ、NMR解析などを組み合わせた構造生物学的解析が行われた。その結果、SART3のRRM1–2はU6 snRNAの非対称バルジ領域に結合し、2:1の結合比をとることが示された。この結合様式は、SART3がN末端のHATリピートドメインを介して二量体化することで、機能的に4つのRRMを形成することにより実現されると考えられる。
NMR解析により、U6 snRNA側ではU6₃₈–₄₃(GAUACA)およびU6₄₆–₅₀(GAAGA)の2つの配列要素がRRM1によって認識されることが明らかとなった。RRM1はU6 snRNA認識の主要な役割を担い、RRM2は単独では結合能が低く、補助的に関与することが示唆された。また、RRM1およびRRM2はいずれも典型的なβαββαβフォールドをとり、構造的には独立したドメインであることが示された。
これらの実験結果を基に、HADDOCKを用いたデータ駆動型の複合体モデルが構築され、二量体化したSART3の2つのRRM1がU6 snRNA上の2つの配列要素を同時に認識する新規の結合様式が提案された。この結合様式は、酵母Prp24に見られるU6 snRNA認識機構と部分的に類似しつつも、ヒトSART3特有の進化的改変を反映したものである。
本論文を通して、ヒトSART3が二量体化を利用してU6 snRNA認識能力を拡張し、スプライソーム再利用過程におけるU6 snRNA制御の理解を深めることができた。U6 snRNAは成熟、修飾、分解、再利用といった複数の段階を経て動的に制御されていることから、SART3によるU6 snRNA認識は、これらの過程と協調して機能している可能性が考えられる。今後、SART3がU6 snRNA代謝全体の中でどの段階に関与しているのかを明らかにすることにより、スプライシング制御とRNA品質管理機構の接点がより明確になると期待される。